2025年4月13日
アーチカットとオープニング
ログウォールが堂々と立ち上がったその瞬間-
ログハウスづくりは、いよいよ“顔”を与える工程へと
移っていきます。
本日のテーマは、アーチカットとオープニングの加工。
ログの個性がにじみ出る、美しさと技術の融合部分です。
アーチカット-ログの表情をつくる技
アーチカット(またはフレアーカット)は、
ログ壁またログエンドに施す曲線状のデザイン加工です。
一見すると装飾的な工程に思われるかもしれませんが、
実はチェーンソーの高度な操作技術と繊細な造形感覚が
試される重要工程です。
自由なデザインが許されるからこそ、美しさだけでなく
構造的な安定性にも配慮が必要です。
以下の2点は、アーチカットを安全かつ美しく仕上げるための絶対条件です。
曲線の半径は最低でも45cm以上に設定すること。
それ以下のRだとチェーンソーの制御が難しく、
滑らかなカットが困難になります。
ノッチから20cm以上ログエンドを残すこと。
これは構造上の強度保持に必要不可欠。
ログウォールの耐力を保つための設計基準にも明記されています。
ログビルダーは、このカットを通してログに命を吹き込み、
家そのものの印象を左右する「表情」を創ります。
現場では「これが一番性格が出る」と言われるほど、
個性が際立つ作業です。
🦅 代表的なアーチカット「イーグルアーチ」
アーチカットの中でも特に人気が高いのがイーグルアーチ。
その名の通り、「鷲が羽ばたいているような」優雅で
ダイナミックな曲線を描くデザインです。
見る人の目を惹きつけ、ログハウス全体に芸術性を与える仕上げとして、
多くの職人に愛されています。
オープニング──機能と構造をつなぐ工夫
アーチカットがログハウスの顔なら、
オープニングはその“口”や“窓”となる部分。
開口部の加工には、機能性・精度・将来的な動きのすべてを
考慮しなければなりません。
特に重要なのは、ヘッダーログ(開口部の最上段にくるログ)の扱いです。
このログは、施工途中でログウォールに積んだまま加工するのが
極めて難しいため、以下のような段取りが必要です。
ヘッダーログの開口位置を墨付け。
ログウォールに組む前に、地上であらかじめ平面カット。
積み上げ後に開口がきれいに納まるよう計算しておく。
さらに忘れてはいけないのが、セトリング(ログの収縮沈下)対策。
開口部があることで、ログの重さによる圧縮方向の動きが
不均一になりやすいため、キーウェイ(縦溝)を開口部両脇の
ログに加工して、スライドできる余裕を残します。
この細やかな配慮こそが、住んでからの快適性と耐久性を
決定づける技術なのです。
実際のログハウス講座では…
アーチカットやオープニングの作業は、
図面と現場指導を組み合わせた実践形式で学びます。
チェーンソーの角度、力の抜き方、曲線の“描き方”は、
経験を重ねたログビルダーからでなければ学べません。
そしてなによりも、目の前で完成していくログの姿は、
受講生にとって忘れられない経験になるでしょう。
アーチカットとオープニングは、
ログハウスに表情と機能を与える作業です。
それは単なる加工ではなく、
「木」と「人」が対話しながら形を作っていく工程。
技術と感性が交差するこの作業こそ、
ログハウスづくりの醍醐味なのです。
※令和6年度埼玉県林業技術者育成研修40日間をダイジェストでまとめました。
ぜひご覧ください。